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秘本衆道会
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「お前、女だったのか……」in江戸時代

少し前に、こういうニュースを見かけました。




今 「男装女子」 が熱い!! 新ドラマ・アニメで男装だらけ







ほほう、俄か男装女子ブームの到来ですか。

しかし、世の創作物の中に





「ボーイッシュ……を通り越して、少年そのものな少女」





が出てくるようになったのは、別に今夏が初めてのことではありませんわな当然。




その手の類型として、古いところでは『うる星やつら』の藤波竜之介や『アニメ三銃士』のアラミス、最近だと『アイドルマスター』の菊地真あたりが挙げられます。

そういうキャラは大抵、正真正銘のオトコだと周囲に勘違いされたせいで数々の悲喜劇に巻き込まれます。

でもってほとんどの場合、嬉しくも恥ずかしい偶然によって(着替えや入浴を覗かれる・胸を触られるなど)、ようやくオンナだと認識してもらえるようになる……っつーのもまた、黄金パターンでありますな。




本朝古典の世界にも、「オトコノコにしか見えないオンナノコ」の例はいくつか見出せます。



特に有名なところでは『平家物語』の巴御前がいますし、ちょっと王朝文学に詳しい方なら『とりかへばや物語』の姉君を思い浮かべるところでしょう。





そして本日の弊ブログでは、それらの系譜の中でもかなりマイナーな一例を紹介申し上げたく。

出典は、
『あなをかし』という江戸後期の艶笑エピソード集です。










京近き何がしの院の亀若とて、いみじき稚児ありけり。


としは十八、九ばかりにやあらん。


ちごにはすこし、さだすぎたる心地すれど、みめかたち、たぐひなく美(うる)はしかりければ大徳こなくかなしうし給ふあまり、僧にも、をのこにも、たへて世の人にあはせ給はざりしかど、三枝何がしなん、ものよむ友にて、一人親しうゆきかひける。





訳:

京の都に近い某寺院には、「亀若」というハイレベルな稚児が住んでいた。

年齢は18,9歳ぐらい。


稚児というにはオトナすぎるような気もするが、とにかくそんなの関係ないぐらいルックスが美しかったので、寺の和尚はいたく可愛がっていた。で、大切にするあまり、他の僧にも、寺の外の男にも一切会わせようとはしなかった。しかし、「三枝ナントカ」という文学に造形の深い友人だけは、ただひとり親しい付き合いを続けていた。











えー、江戸期以前のエロ文学に「寺」と「稚児」が出てきた場合、そこで繰り広げられるのは「男×男」のドラマだと相場が違っています。


しかし上記の三枝さんときたら、この手の艶笑譚にゃ珍しい事に……完全なるノンケです。





そんなわけで亀若への接近を許されていたわけですが、ある雨の夜の晩、和尚が留守の時に、彼らがふたりっきりで過ごす機会がやってきてしまいます。


両者とも古典談義をしたり和歌を詠んだりして楽しい時間を過ごすのですが、ここで三枝さん、亀若の顔をじっくり見ているうちに、どうにも妖しい感情が芽生えてきます。









肌へ濃(こま)やかにして、あてにけだかく、高位の公達といふとも、立ちならびては気圧され給ひぬべくおぼゆるを、あはれ女にて見たらましかばと、なほあきたらぬ心おごり……





訳:

きめ細やかな肌には上品な気高さが漂っていて、もし偉ーい貴族であっても、亀若と並んだならきっと気圧されてしまうだろうな……と思うと、この子を女として扱いたい!ってな心の高ぶりも抑えがたくなってきて……












亀若の方も、三枝のことは憎からず思っているようで、その夜はやたらと思わせぶりな態度で誘惑しまくります。


男嫌いの三枝もついに意を決し、「こんなに可愛いんだし、もうショタでも構わねええええええ!」とばかりに亀若を抱きかかえ、そのまま勃起した陰茎を挿入してしまいます。


その感触が「ぬるぬると、すひこむやうになん入りける」であることに感動した彼は、うっかり「男の味」に目覚めそうになるのですが、ここで相手の陰毛を手で探ってみて、二度びっくりすることになります。





すなわち……あるべき場所に、あるべきモノが無い!





そう、亀若は「女」だったのです!





情交の最中、彼もとい彼女は想いのたけを告白します。







つひに男にてあひまゐらせねばやと思ひ給へはべりしかど、こよひといふこよひ、せちなる願ひのかなひぬるうれしさ、袖にも身にもあまりはべりて、かく思はずなる、へんぐゑのすがたを現はしまゐらせぬることよ。





訳:

最後まで男のフリをしたまま会い続けようと思っていましたが、今夜という今夜はついに告白してしまいました。そして、恋の願いが成就した嬉しさが全身にあふれるあまりに、つい「変化」の正体を現してしまいました!













とまあ実にイイ雰囲気だったのですが、そこに和尚が帰ってきてしまい、ふたりは慌てて別れるのでした。

以上で、この話は終了!







どうして亀若は男装してまで寺暮らしをする必要があったのか?


和尚は、彼女の正体を知っていたのか?


また三枝と亀若の仲は、結局うまく行ったのか?


色々と謎は残りますが、『あなをかし』はそのあたりの事をサッパリ書いてくれていません。


投げっぱなし!




なお、亀若はこの後のエピソードにも再度登場して、そこでは同性の少女に「美少年」として惚れられたがためにひと騒動を起こすことになるのですが……それはまた別の話。




ついでに付け加えれば。


歴史的に有名な「女装少年」である牛若丸は、成長してから「亀若丸」という子をもうけた……という伝説があります。


『あなをかし』の作者が「男装少女」の名前として「亀若」を選んだ理由は、もしかしたらそのあたりの連想が働いているのかなー、とか思ったり。






とまれ。


熱い「男装女子」が楽しめるストーリーは、一応大昔から例があったんだぜヘイ(数は少ないけど)! 


……ってな一幕でございました。


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by hihonsyudo | 2011-09-05 22:31 | 歴史・古典よもやま話 | Trackback | Comments(0)
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