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弊サークルはこれまで、日本に「文明開化」とやらが押し寄せるより以前に書かれた、いわゆる「古典」と称される作品ばかり扱ってきました。
しかし、いくら日本が「近代化」を迎えたからって、以降すっかり「野蛮」で「不健全」な人間が国内から一層されたかと言えば……
もちろん、そんな事実は全くない!
そこで当方、本朝の「いろもの」文学史を探る上で、レトロすぎる世界ばかりに遊んでおっては不十分と思いなし、此度「近現代編」を作ってみました。
コンセプトは……
マジ不健全!
バット18歳未満でも堂々と読める!
です。
つまり、読めば必ず
「うはwこれやべえwwマジキチwww」
とドン引きしてしまうような「有害」要素を多分に含みつつも、歴史的名作ヅラして公共図書館にシレッと収まっている20世紀文学を大発掘!
明治時代のキモ中年ストーカー小説、昭和初期の百合小説、恐らく太陽系に唯一の特殊すぎるフェチ小説など、いろいろ取り揃えておりますです。
2011年2月13日・初版。
頒布価格300円。
同人ショップ委託価格は400円。
本日のアクセス解析を見て、椅子から転げ落ちて痙攣ピクピクするぐらい驚きました。
なにせ、
「君臣合体の儀」
だの、
「藤原頼長 男色」
だの、そういう日常生活の場においては絶対誰も口にしないようなキーワードばかりが、被検索結果欄に数多く残っているのですから!
いったい、世の中で何が起こっているのか?
疑問に思った当方は、同様のキーワード群を使ってグーグルに問い合わせてみました。
……ああ、なるほど。
どうやらつい昨日の1月19日に、NHKで藤原頼長を特集した番組が放映された みたいですね。
その影響で、偉大なる頼長さんの爛れた性生活に興味を持つ人が増えた、と。
おかげで、当方が過去に書いた頼長さん関連記事 も陽の目を見ることができた、っと……
よくやったNHK!
えらい!
エロい!
えらくてエロすぎる!
いやー。
お茶の間で平安デカダン貴族どもの実態が堂々公開されるたあ、いい時代になったものです。
しかしながら、この『歴史秘話ヒストリア』公式サイト 内における頼長回の紹介 を読むと、絶対的な間違いとまでは言えぬにしろ、ちょっと誤解を招きそうな表現がある。
勝手ながら、そこら辺の補足をさせていただきたく。
まず、NHKの人によれば
>数々の事件で、悪左府=恐怖の左大臣と呼ばれた藤原頼長
だそうですが、この場合の「悪」を「恐怖」と訳すのは、いささか語弊があります。
『角川古語大辞典』で「悪」を引いてみますと、接頭語の用法として、
悪源太、悪七兵衛、悪左府、悪禅師など人名、官名の類に冠し、人並み外れた能力やきびしさ、たけだけしさに対する畏敬の念をこめた通称を作る。悪竜、悪僧などの、倫理的な意味よりも、威力に対する恐れを表す「悪」に通じる。
ってな説明をしている。
また鎌倉時代の歴史小説である『保元物語』では、頼長の人物像を、
仁義礼智信をただしくし、賞罰・勲功をわかち給ひ、政務きりとをしにして、上下の善悪を糺されければ、時の人、悪左大臣とぞ申ける。
このように表現している。
『保元物語』は「事実を基にしたフィクション」なので、この頼長像も必ずしも本人そのままだということにはなりません。
しかし、「悪」という言葉の指す概念が、今と昔とでは微妙に違っているということについては、上記の2例で証明できたかと。
あと、これまたNHKの人いわく、
>頼長が残した日記『台記』には、うら若き貴族から家来たちまで、男性たちとの赤裸々な恋愛記録がつづられている。
>なぜ、頼長は恋愛日記を書き残したのか?
こういう言い方をされると、『台記』すなわちエロエロラヴラヴの連続!な内容であるかのように思う方もいらっしゃるかもしれませんが……
残念ながら、膨大なる『台記』全巻のうちに、具体的な性生活の記述は、ほんの一部しかありません(いやまあ、その「一部分」がやけに濃密な描写であるからこそ、この書は好事家の間で有名になっているのですが)。
ついでに言いますと、ほぼ全体が漢文で書かれているため、読むのにえらく苦労します。
よって、伏見憲明の『プライベート・ゲイ・ライフ』や、田中康夫の『ぺログリ日記』みたいなものを期待しつつ実物に触れるなら、きっと肩透かしを食らうことでしょう。
……うん、実際に臨川書店版の『台記』に目を通してガッカリした人間が言うんだから間違いない。
とまれ。
世界史上に類の少ない貴重なゲイ資料をメインの題材として、一本の歴史番組を作ってみせたNHKのチャレンジ精神には、惜しみない賞賛を送りたいと思いますです。
この調子で、世間にもっと本朝男色史が浸透すれば良いなあ……と心から願うものです。
以下の記事は、先日の冬コミにて発行したペーパーとほぼ同内容です使いまわしです。
というわけで、どこかで見たようなタイトルロゴをドーン!
宝島社が毎年行う『このライトノベルがすごい!』読者人気投票において、2010年の第1位を獲得したのは……
『とある魔術の禁書目録』なる作品でした。
その奇妙なタイトルは、作中に登場するヒロインの名に由来します。彼女は古今東西あらゆる魔法の書を完全に暗記しており、破壊的・破戒的なヤバい知識も多く有していることから、
「Index-Librorum-Prohibitorum」
という通称で呼ばれています。
で、そのラテン語ネームを日本語に直せば「禁書目録」ってなわけ。
つーわけで「禁書目録」という単語は、今や全国のオタク口に膾炙しまくるようになりました。
あまりオタ向けコンテンツに興味をお持ちでない方も、ネット上でしばしば見たり聞いたりしてるんじゃないかと。
しかしこの「禁書目録」、決してここ数年の秋葉原的流行の中から誕生した「新語」ではありません。
そもそも『Index-Librorum-Prohibitorum』と名付けられた書物は西洋史上に実在しており、主にヨーロッパのカトリック業界で流通してきました。
そこには、彼らの教義や道徳にそぐわぬ「異端」の書が多く載せられていたそうで。
さらに。
「禁書目録」という日本語は、今や多くの人が『Index-Librorum-Prohibitorum』の和訳として作られたものだと思っているようですが、実は『Index(略)』の発生とは無関係に、同タイトル・同コンセプトのアイテムが日本にも存在していました。その証拠が、以下の画像です。
これは何かと言えば、かつて京都の書店組合によって出版された、そのものズバリ『禁書目録』と題する本の第1・第2ページです。出版年は明和8年(西暦1771年)。その内容については、最初の数行で説明されてます。
禁書目録序
古来御禁制之唐本・和書、並に絶版売買停止之書、其外、秘録・浮説之写本、好色本之類は片紙小冊なりといへとも。かりにも取扱ふへからす……
つまり、「奉行所から睨まれそうな『有害図書』は、絶対に店頭に並べちゃいけないどすえ!」ってな事を言ってるんですね。
また、この序文に続く以後のページでは……
とまあ、売ればお縄を頂戴する確率の高い(らしい)タイトルばかりがズラズラーッと大量に並べられております。
上掲画像は、「外国から輸入されたもの、またはキリスト教に関連するもの」に分類されるリストの一部ですが、他のページでは、「幕府や各大名家の歴史を深く探って暴き立てる本」や、「幕府への政治批判が含まれる本」や、あとは「今で言うところの『18禁』に値するようなエロ本」などが挙げられています。
その数、実に10万3000冊!……には当然遠く及ばぬものの、とりあえず全部で約240冊が槍玉に。
キリスト教世界において『Index(略)』の編纂が開始されたのは、16世紀からだと言われています。
しかし、徹底した鎖国状態の中に生きていた江戸期の庶民が、遥か泰西の事情をそこまで深く知っていたとは思えないので、『Inなんとか』と京都版『禁書目録』とが互いに中身も題名も被っているのは、きっと全くの偶然によるものでしょう。
つか、「禁書」も「目録」もありふれた一般名詞ですしね。
……でも。
その「偶然」を引き起こした原因は、歴史上何度も繰り返されている「必然」に他なりません。
すなわち、
「政治的権力を握っている層は、自分たちの気に入らない『言論』や『表現』を一方的に叩きつぶそうとする」の法則!
そいつぁ誠に残念ながら、古今も東西も問わず、人類史にありふれた現象なんですよねぇ……
かつてジョルダノ・ブルーノやヴォルテールは、それぞれ地動説や自由主義を唱えたことでヴァチカンに睨まれ、その著作を見事『Inなんとか』にリストアップされる羽目になりました。
また近世の本朝においても、優れた戯作者・絵師たちによる好色草子・洒落本・春画などが、しばしば公権力による大きな弾圧を受けてきました。
しかし、「公序良俗を乱す」ものとして長らく忌み嫌われてきたそれらの書や絵が、現在どのような評価を得ているかは……語るまでもなし!
ヒステリックな石頭は、どこの国・どこの時代にも存在します。
で、彼らは何故か、その地点・時点における「禁書目録」を必死になって作りたがります。
が、それは大変に愚かしい行為である!という真理もまた、歴史が証明しているのです。
「優れた表現」は、残る。
しかし例えば、どこぞの国の首都が掲げた野暮条例なぞは、歴史の流れに洗われて摩耗し、いつしか消滅するだけなんですよ絶対。
追伸。
明和版『禁書目録』の画像は、『日本書目大成 第4巻』(汲古書院,1989)より転載しました。
またタイトルロゴの作成については「とあるさくらのジェネレータ」様 を利用させていただきました。
感謝!
いやあ、仕事始めマジ辛い。
一日でも早く盆休みが到来することを祈りつつ、ここ最近の愉快な出来事を思い出して無理にテンションを上げてみる。
第一に、文学フリマで松永英明さんに拙著をお買い上げいただいた のは大名誉!でしたね。
約10年前の、当方がインターネットの世界に触れたばかりの頃に大きな影響を受けた方ですゆえ!
あ、もちろん最近の「事物起源研究家」としての手腕にも、目を見張るばかり。
会場で当方が買った松永さんの著作では、微に入り細をうがつ徹底した「調査魔」っぷりがいかんなく発揮されまくっていて、大いに嘆息!
どんな事物であれ、まず他ならぬ「自分自身の眼」で確かめる。
浮世の風説に惑わされず、「一次情報」をこそ大事にする。
そういうスタンスは、資料・情報系の同人屋として、今なお見習い続けております。
あと、弊サークルの既刊『合本 日本のBL古典』には、平賀源内の大傑作チンポ随筆・『痿陰隠逸伝』の原文とオタ訳を収録してありますが……
しかも、これまた当方なんぞよりずっと精緻な訳で、難語の注釈も完璧!
「まえがき」「あとがき」にあたる部分も、きちんと拾っているし……
流石でございます(大平伏)。
源内ファンのみならず、少しでも下品古典に興味のある方は、上掲リンク先はマスト!ですぜ!
とまれ、同人イベントの場で、そういう優れた知性と直接にお話できたのは、貴重にして大変タメになる体験でありました。
次。
冥府古典道の先輩である不度家行先生の冬コミ新刊 が熱すぎた!
まず、読・即・首をかしげる謎古典研究の金字塔たる『バカ古典文学体大系』シリーズ総集編!
某文庫を豪快にオマージュしまくった装丁はもちろんのこと、中身だって超高濃度すぎて、大変にボナペティでありました。
あまつさえ。
同時に頒布されたコピー誌・『南北朝時代のDREAM C CLUB-鳥海くらべ考-』の完成度が、とにかく尋常じゃなかった。
『鳥海くらべ』なる架空の説話古典をでっち上げたあげく、有名ギャルゲー『ドリームクラブ』の起源はその文章中にこそあったんだよ!と、キバヤシ真っ青のギガンティック大法螺を吹き荒れさせる!
中身をちょっと引用いたしますと……
★神留以比売(かむるいひめ)
十善女体権現の六人目。『ドリームクラブ』のホストガール・るいに相当する。
胸の病を患っており、羽鳥王が病を治療した。その感謝と仏の験力を表す為、夏の鳥海山には心の字の万年雪「心字雪渓」が見られるようになったと記されている。
名前は『延喜式』の祈念祭・大嘗祭の祝詞に登場する「神漏伎(かむろぎ)命」の転訛と考えられる。
るいの本業が教師と云う設定は、『沙石集』にある「尾籠ナル本地問答ノ事」にて、「るい先生(せんじょう)」と呼ばれている為だろう。この「先生」とは、教師のことではなく「~さん」のような敬称である。
いやはや、まったくもって凄絶な内容であります。
本当に存在する古典や神名と、スカーレットな大嘘とをバランスよく入り乱れさせながら、ここまで説得力に満ちた「いかにもありそう感」を醸し出すとは……
きちんとした史学・文献学の教養を持つ碩学が、本気でふざけた時の破壊力たるや……ちょっとヤバすぎだろおい!
『ランゲルハンス島航海記』や『鼻行類』にも比すべき、ユーモア偽書の傑作と申せましょうぞ。
当方、これを東京滞在中に宿で読んで、狭い部屋の中を狂ったようにノタうちまわりました。
『ドリームクラブ』のことは良く知らないのですが、それでも爆笑しまくった!
当方が読みたかった本の、同時に書いてみたかった本の理想として、ほんとにドドドドストライクだったのです。
いやー、してやられた!
同じ「現代人の視点から見て、あまりにも変すぎる古典」ジャンルで活動している身として、ここまで完成度の高い仕事を魅せつけられたとあっちゃ、心中穏やかではいられぬ。
今回の弊サークルが新刊として出した「ニセ伝統舞台本」と比べると、「こだわり」アンド「古典愛」の差が歴然としすぎていて……ねえ?
いつか、自分もこれぐらい読者を感動させたり頬を引きつらせたりできる一冊が書けるようになりたいなあ……いや、ならねば!
と、気合を入れなおした元旦でありました。
その次。
『ダライアスバーストAC』 が面白すぎるよ!
かつて初代筐体に度肝を抜かれたロートルも、こんな豪勢な筐体は初めて見たぜ!っていうヤングメンも!
とにかく近くのゲーセンで見かけたなら、速攻で200円を投入するんだ!
ちとゲームとしてとっつきの悪い面も無いわけでも無いんですが、まあ1000円ぐらい使えば大体コツは掴めるでっしゃろ。
んで、その頃にはボディソニックと巨大魚型戦艦どものカリスマにメロメロ……っと。
魂こもりまくった作品をありがとう、タイトー!
最後に。
今年はウサギ年です。
ウサギにゃ特定の発情期というものがなく、春夏秋冬オールタイム交尾・出産が可能です。
南方熊楠の快著『十二支考』中、『兎に関する民族と伝説』の章によると、古代ギリシャ・ローマ、さらにユダヤ人の間じゃ、ウサギすなわち「ドスケベ」かつ「両性具有」の生き物だと広く信じられていたそうで。
彼奴らの繁殖力が高すぎること、および雄・雌問わず肛門まわりに臭腺があることから、かくなる不名誉な伝説が生まれたのでしょう。
その伝説は遥か後世に至ってなお消えることなく、ついには米国の有名なエログラビア誌『PLAYBOY』のロゴとして、ウサギが描かれたりとか。
で、まあ。
これから始まる2011年は、そんな自然界の生んだ偉大なるヤリチン・ヤリマンの支配する年です。
すなわち……
ザ・イヤー・オブ・下品!
なのです、ええ!
ゆえに。
弊サークルもまた、芳醇なるネタの宝庫たる国文学史をば例年以上に深く嗅ぎまわり、粉骨砕身、より一層「残念!」なネタを発掘していく所存也。
願わくば読者諸賢、満腔の御声援あれ!
正式タイトルは、
「みんなが大好きな
ゲームとかアニメとか漫画とかを、
能とか狂言とか歌舞伎っぽい台本に翻案してみたよ!本
略して……
伝統オタ舞台!」
で、中身も全くその通り。
とりあえず、以下のサンプルみたいなノリで突っ走ってます。
2010年12月31日・初版。
頒布価格400円。
内容の他の例、およびこんなものを書いてしまったことに関する弁明については、こちら もご参照いただきたく。
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