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秘本衆道会
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とある明和の禁書目録

以下の記事は、先日の冬コミにて発行したペーパーとほぼ同内容です使いまわしです。

というわけで、どこかで見たようなタイトルロゴをドーン!



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宝島社が毎年行う『このライトノベルがすごい!』読者人気投票において、2010年の第1位を獲得したのは……


『とある魔術の禁書目録』なる作品でした。


その奇妙なタイトルは、作中に登場するヒロインの名に由来します。彼女は古今東西あらゆる魔法の書を完全に暗記しており、破壊的・破戒的なヤバい知識も多く有していることから、


「Index-Librorum-Prohibitorum」


という通称で呼ばれています。

で、そのラテン語ネームを日本語に直せば「禁書目録」ってなわけ。


つーわけで「禁書目録」という単語は、今や全国のオタク口に膾炙しまくるようになりました。

あまりオタ向けコンテンツに興味をお持ちでない方も、ネット上でしばしば見たり聞いたりしてるんじゃないかと。


しかしこの「禁書目録」、決してここ数年の秋葉原的流行の中から誕生した「新語」ではありません。


そもそも『Index-Librorum-Prohibitorum』と名付けられた書物は西洋史上に実在しており、主にヨーロッパのカトリック業界で流通してきました。

そこには、彼らの教義や道徳にそぐわぬ「異端」の書が多く載せられていたそうで。


さらに。

「禁書目録」という日本語は、今や多くの人が『Index-Librorum-Prohibitorum』の和訳として作られたものだと思っているようですが、実は『Index(略)』の発生とは無関係に、同タイトル・同コンセプトのアイテムが日本にも存在していました。その証拠が、以下の画像です。




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これは何かと言えば、かつて京都の書店組合によって出版された、そのものズバリ『禁書目録』と題する本の第1・第2ページです。出版年は明和8年(西暦1771年)。その内容については、最初の数行で説明されてます。



禁書目録序
古来御禁制之唐本・和書、並に絶版売買停止之書、其外、秘録・浮説之写本、好色本之類は片紙小冊なりといへとも。かりにも取扱ふへからす……



つまり、「奉行所から睨まれそうな『有害図書』は、絶対に店頭に並べちゃいけないどすえ!」ってな事を言ってるんですね。
また、この序文に続く以後のページでは……





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とまあ、売ればお縄を頂戴する確率の高い(らしい)タイトルばかりがズラズラーッと大量に並べられております。

上掲画像は、「外国から輸入されたもの、またはキリスト教に関連するもの」に分類されるリストの一部ですが、他のページでは、「幕府や各大名家の歴史を深く探って暴き立てる本」や、「幕府への政治批判が含まれる本」や、あとは「今で言うところの『18禁』に値するようなエロ本」などが挙げられています。

その数、実に10万3000冊!……には当然遠く及ばぬものの、とりあえず全部で約240冊が槍玉に。




キリスト教世界において『Index(略)』の編纂が開始されたのは、16世紀からだと言われています。

しかし、徹底した鎖国状態の中に生きていた江戸期の庶民が、遥か泰西の事情をそこまで深く知っていたとは思えないので、『Inなんとか』と京都版『禁書目録』とが互いに中身も題名も被っているのは、きっと全くの偶然によるものでしょう。

つか、「禁書」も「目録」もありふれた一般名詞ですしね。


……でも。

その「偶然」を引き起こした原因は、歴史上何度も繰り返されている「必然」に他なりません。


すなわち、

「政治的権力を握っている層は、自分たちの気に入らない『言論』や『表現』を一方的に叩きつぶそうとする」の法則! 



そいつぁ誠に残念ながら、古今も東西も問わず、人類史にありふれた現象なんですよねぇ……



かつてジョルダノ・ブルーノやヴォルテールは、それぞれ地動説や自由主義を唱えたことでヴァチカンに睨まれ、その著作を見事『Inなんとか』にリストアップされる羽目になりました。


また近世の本朝においても、優れた戯作者・絵師たちによる好色草子・洒落本・春画などが、しばしば公権力による大きな弾圧を受けてきました。


しかし、「公序良俗を乱す」ものとして長らく忌み嫌われてきたそれらの書や絵が、現在どのような評価を得ているかは……語るまでもなし!



ヒステリックな石頭は、どこの国・どこの時代にも存在します。

で、彼らは何故か、その地点・時点における「禁書目録」を必死になって作りたがります。

が、それは大変に愚かしい行為である!という真理もまた、歴史が証明しているのです。


「優れた表現」は、残る。

しかし例えば、どこぞの国の首都が掲げた野暮条例なぞは、歴史の流れに洗われて摩耗し、いつしか消滅するだけなんですよ絶対。






追伸。

明和版『禁書目録』の画像は、『日本書目大成 第4巻』(汲古書院,1989)より転載しました。


またタイトルロゴの作成については「とあるさくらのジェネレータ」様 を利用させていただきました。

感謝!



……て言うか、本記事を書こうと思ったそもそも動機は、このロゴを使ってみたかったからなんです流行に乗ってみたかっただけなんです。ちなみに当方の一番好きなキャラは黒子ですの。一見リビドーあふれる百合JC、されどその実態は雄々しき勇者!ってところに惚れたんですの今や人生のお手本ですの……って、そんなこたあ誰も聞いてませんねマジどうでもいいですね。

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by hihonsyudo | 2011-01-08 23:57 | 歴史・古典よもやま話 | Trackback | Comments(0)
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