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秘本衆道会
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頼長、NHK進出!

本日のアクセス解析を見て、椅子から転げ落ちて痙攣ピクピクするぐらい驚きました。


なにせ、



「君臣合体の儀」



だの、



「藤原頼長 男色」



だの、そういう日常生活の場においては絶対誰も口にしないようなキーワードばかりが、被検索結果欄に数多く残っているのですから!


いったい、世の中で何が起こっているのか?

疑問に思った当方は、同様のキーワード群を使ってグーグルに問い合わせてみました。



……ああ、なるほど。

どうやらつい昨日の1月19日に、NHKで藤原頼長を特集した番組が放映された みたいですね。

その影響で、偉大なる頼長さんの爛れた性生活に興味を持つ人が増えた、と。

おかげで、当方が過去に書いた頼長さん関連記事 も陽の目を見ることができた、っと……









よくやったNHK!

えらい!

エロい!

えらくてエロすぎる!





いやー。

お茶の間で平安デカダン貴族どもの実態が堂々公開されるたあ、いい時代になったものです。


しかしながら、この『歴史秘話ヒストリア』公式サイト 内における頼長回の紹介 を読むと、絶対的な間違いとまでは言えぬにしろ、ちょっと誤解を招きそうな表現がある。


勝手ながら、そこら辺の補足をさせていただきたく。




まず、NHKの人によれば



>数々の事件で、悪左府=恐怖の左大臣と呼ばれた藤原頼長



だそうですが、この場合の「悪」「恐怖」と訳すのは、いささか語弊があります。


『角川古語大辞典』「悪」を引いてみますと、接頭語の用法として、



悪源太、悪七兵衛、悪左府、悪禅師など人名、官名の類に冠し、人並み外れた能力やきびしさ、たけだけしさに対する畏敬の念をこめた通称を作る。悪竜、悪僧などの、倫理的な意味よりも、威力に対する恐れを表す「悪」に通じる。



ってな説明をしている。


また鎌倉時代の歴史小説である『保元物語』では、頼長の人物像を、



仁義礼智信をただしくし、賞罰・勲功をわかち給ひ、政務きりとをしにして、上下の善悪を糺されければ、時の人、悪左大臣とぞ申ける。



このように表現している。

『保元物語』は「事実を基にしたフィクション」なので、この頼長像も必ずしも本人そのままだということにはなりません。

しかし、「悪」という言葉の指す概念が、今と昔とでは微妙に違っているということについては、上記の2例で証明できたかと。





あと、これまたNHKの人いわく、



>頼長が残した日記『台記』には、うら若き貴族から家来たちまで、男性たちとの赤裸々な恋愛記録がつづられている。


>なぜ、頼長は恋愛日記を書き残したのか?



こういう言い方をされると、『台記』すなわちエロエロラヴラヴの連続!な内容であるかのように思う方もいらっしゃるかもしれませんが……

残念ながら、膨大なる『台記』全巻のうちに、具体的な性生活の記述は、ほんの一部しかありません(いやまあ、その「一部分」がやけに濃密な描写であるからこそ、この書は好事家の間で有名になっているのですが)。

ついでに言いますと、ほぼ全体が漢文で書かれているため、読むのにえらく苦労します。


よって、伏見憲明の『プライベート・ゲイ・ライフ』や、田中康夫の『ぺログリ日記』みたいなものを期待しつつ実物に触れるなら、きっと肩透かしを食らうことでしょう。



……うん、実際に臨川書店版の『台記』に目を通してガッカリした人間が言うんだから間違いない。





とまれ。

世界史上に類の少ない貴重なゲイ資料をメインの題材として、一本の歴史番組を作ってみせたNHKのチャレンジ精神には、惜しみない賞賛を送りたいと思いますです。

この調子で、世間にもっと本朝男色史が浸透すれば良いなあ……と心から願うものです。



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by hihonsyudo | 2011-01-20 21:24 | 歴史・古典よもやま話 | Trackback | Comments(0)
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